永作博美 映画「八日目の蝉」 あらすじと結末(ネタバレあり)原作、ドラマと異なるラストに注目
2016/11/23
いつまでも若々しい女優、永作博美。
アイドルグループのメンバーとして始まり、その後は女優として大活躍。
ドラマに映画、舞台にCMにと、その活動はとどまるところを知らない2児の母。
女優としての受賞も数多く、映画「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」、「八日目の蝉」で、ブルーリボン賞、日本アカデミー賞など、数々の女優賞を受賞しています。
ここではその「八日目の蝉」のあらすじ(ネタバレありあり)を見てみましょう。
この作品で、永作博美は毎日映画コンクール 女優助演賞、ブルーリボン賞 主演女優賞、日本アカデミー賞 最優秀助演女優賞など、多くの賞を受賞しています。すごいですね。
また成長した子供を演じるは、こちらも今をときめく女優、井上真央。
彼女もこの映画で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞など数々の賞を受賞しています。
映画のキャッチコピーは今でも覚えているこの言葉、
「優しかったお母さんは、私を誘拐した人でした。」
ある事件の実話を元にしているとも言われるこの映画。
原作は角田光代の同名小説「八日目の蝉」。
NHKの連続ドラマ枠「ドラマ10」の第一作目としても放送されています。
Contents
予告編
土砂降りの中で起きた誘拐事件。
犯人は父の愛人。誘拐されたのは私。私はその人を本当の母だと信じていた...
映画「八日目の蝉」あらすじ
誘拐犯となる愛人の名は希和子(永作博美)。
希和子は不倫をし、赤ちゃんを身ごもるも、結局おろし子供が産めない身体に。
不倫相手の男性をあきらめるため、その男性とその妻との間にできた赤ちゃんを一目見て全てを忘れようと男性の家を訪れる。
偶然家を留守にする不倫相手の男性とその妻。赤ちゃんが一人ゆりかごにいた。赤ちゃんを見る希和子。その赤ん坊の中に自分のすべてを見たと思った。
赤ちゃんの笑顔が私の全てを許してくれる。おろした赤ちゃんとその子を重ねて見たんですね。
赤ん坊を抱いて逃げる希和子。
子供の名前は薫とつけた。以前から不倫相手の男性とは、いつか結婚して子供が出来たら男でも女でも薫と名付けようと話していた名前。
誘拐された子の本当の名前は「絵里奈」(えりな)。
物語は、
- 井上真央演じる「大学生になった今の絵里奈」、
- 希和子と二人で暮らし、そして実際の親元に戻った「薫と呼ばれた子供の頃」
の2つの時間を行き来しながら進みます。
主な登場人物
- 希和子: 誘拐犯
不倫相手の赤ちゃんを誘拐し、薫という名を付けて自分の子供として育てる。エンジェルホームという施設に逃れ、更に小豆島(しょうどしま)へ渡り最後はそこで逮捕されることに。逮捕直前まで薫を誰よりも愛した人。
- 薫: 誘拐された赤ちゃん。希和子につけられた名前。
誘拐された赤ちゃん。誘拐犯・希和子の不倫相手の子供。生まれたばかりの頃に希和子に誘拐され、実の子として育てられる。学校へ上がる前、実の親の元に返されるが、家庭に馴染めず成長する。
- 絵里奈: 誘拐された赤ちゃん。薫の本当の名前。
子供だった薫の大学生に成長した現在の姿。誘拐犯・希和子と同じように不倫して身ごもる。
子供の頃に施設で一緒に育った千草に出合い、一緒に昔の記憶をたどる旅行に出る。その中で誘拐されていた頃の事、かつて母と慕った人との封印した記憶が1つ1つ戻ってくる。
- 千草: フリーライター(ルポライター)
絵里奈がまだ薫と呼ばれていた頃、エンジェルハウスという施設で姉妹のように一緒に育った。絵里奈の事を記事にしようと絵里奈に近づくが、二人で昔を訪ねる旅に出ることに。
幼いころの境遇から男性恐怖症で、絵里奈とお腹の中の子供を非常に慕う。絵里奈を支え物語を進める、ある意味キーパーソン。
舞台は法廷。恵里菜の実の母の独白、そして希和子の回想から物語りの中へ中へと進みます...
大きくなった絵里奈
成長しても父、母と馴染めない絵里奈。家を出てバイトをしながらの一人暮らし。
子供の頃、ここは自分の家じゃない、海のある自分の家に帰る、と家出を繰り返していた。実の母に全く馴染めない子供。母としては発狂寸前な状態がずっと続く。
希和子さえいなければ普通の家だったのに、と母の言葉を子供の頃から聞かされ、いつしか希和子を憎む子供に成長していた。
そして希和子がそうだったように、奇しくも絵里奈も不倫をして、その相手の子供を身ごもる。
千草との出会い
そこへルポライターとして現れた千草。千草は、絵里奈がまだ薫と呼ばれていた頃、エンジェルハウスという施設で姉妹として育った間柄だった。
絵里奈は不倫相手の子供を身ごもっても、不倫相手との関係が自分の中で整理できない。親には生みます宣言をし、もう母親発狂状態。不倫相手には子供が出来たらどうする?と暗に相談するが軽く流され別れる決断を。
そして出会った千草に取材旅行にと、子供の頃にいた場所を訪ねる旅に誘われ一緒に行くことに。絵里奈自身は昔の自分を探すため、千草はそんな絵里奈の昔を取材するため。
そして二人で小豆島(しょうどしま)へ。
一緒に育った千草
千草は取材と言いつつ、本当は自分の心を埋めてくれる何かを求めていた。多感な子供の頃、エンジェルハウスという男性のいない女性ばかりの特殊な環境で育ち、現在では男性恐怖症になっている千草。
自分は一生誰かの奥さんになれないと絵里奈に告白する。誰かと結婚はできない、でも母になることはできると。子供を産むと決心するも、どうやって子供を育てたらいいか分からないという絵里奈に、一緒に育てようと告げる。
自分の心を埋めてくれるもの、それがかつて子供の頃自分と一緒に育った絵里奈であり、そのお腹に宿る新たな命だった。
以前絵里奈が言った、
「セミはみんな7日で死んじゃう。一人だけ8日目まで生きてたら悲しいじゃん」
千草は言う。
「8日目の蝉は、他の蝉には見れなかったものが見れる。それはすごく綺麗なものかも知れない」と。
絵里奈には、8日目の蝉には絶望しか見えなかったが、千草は希望が見えていた。それは絵里奈と一緒に同じ時を過ごし、お腹の中にいる新たな命に輝く未来を見つけたのかもしれない。
逃げる希和子、薫と共に。
不倫した、後に誘拐犯となる希和子。
不倫相手の奥さんから妊娠していることを告げられる。
赤ちゃんをおろしてしまったこと、二度と子供が産めない身体になってしまった事、不倫相手には赤ちゃんが生まれたこと、不倫が破局をむかえたこと、不倫相手の奥さんになじられたこと。
様々な想いから、結果として相手の赤ちゃんを我が子のように思い、思わず一緒に逃げてしまった。
行きついた先はエンジェルホームという女性の駆け込み寺のような施設。幼い薫と千草が一緒に育った場所。しかしやがて警察の手を恐れ、二人はまた逃亡する。
二人で歩く夜道。薫にせがまれ、お星さまの歌を歌う、といって歌った歌は、
見上げてごらん
夜の星を
小さな星の
小さな光りが
ささやかな幸せを
うたってる
そう、あの名曲、坂本九の「見上げてごらん夜の星を」
(作詞:永六輔、作曲:いずみたく、歌:坂本九)
後に希和子が捕まり、実家に戻った薫(絵里奈)が実の母に「お星さまの歌を歌って」と言われて色々歌ってもダメ出しされ泣き叫ぶ。薫(絵里奈)が歌ってほしかったのはこの歌だった。
新たな旅立ち
エンジェルホームを逃げ出すとき、仲の良かった女性に実家への伝言を頼まれ、行きついた先が小豆島(しょうどしま)。その縁もあって、親子で小豆島に住み着くことに。希和子は子供に言う。これからは一緒に色々なものを見よう。お母さん、働くぞ!
それからの島の生活は、二人にとってどれほど幸せな時だったことか。
島の色々な行事、島の人達との交流。子供同士の付き合い。全てが幸せに包まれていたかのように見えた場所。
もうここには居られない
島の夏祭り。
竹竿の先に火を灯し、田んぼの道を町の人が大勢歩く幻想的な風景。
その中に混じって歩く二人をとらえた写真が、写真コンテストで入賞し、全国紙に掲載されてしまった。
これは一大事。
今までひっそりと隠れるように暮らしていた希和子にとって、自分だどこで生活しているか知られてしまったのだ。
もうここにはいられない。逃げるしかない。希和子は薫を連れて、幸せに暮らしていた小豆島を出る決心をした。
時間が重なる。
夜明け前の小豆島・フェリー乗り場。住み慣れた島から逃げる親子。そして現代では同じ場所に来た絵里奈と千草。過去の出来事と現在が重なる。
逃げる親子の前には警察が待ち構えていた。母はあきらめていた。もうダメだ、逃げられない。子供を先に歩かせる。自分はその場に立ち止まる。
警察に確保される希和子。ママー、ママー、響く薫の声。その情景を正に思い出した現在の絵里奈(薫)。
あの人は最後、何か叫んでいた。そんな記憶しか残っていない。あの女さへいなければ、と実の母の影響でいつの間にか希和子を憎んで育った絵里奈。希和子は何を叫んでいたのか。
警察に両方から腕を掴まれ、確保された希和子。待ってください、と泣き叫ぶ。その子はまだご飯を食べていません、と。
色々な事情が重なるも、到底許されない児童誘拐犯となった希和子。そんな希和子に育てられた薫(絵里奈)。人目を避け、それでも親子が幸せに暮らした小豆島。
全ては子供のために。その想いが凝縮された叫び。ご飯の心配をする当たり前の、でも誰よりも我が子を愛する一人の母に過ぎなかった。
そして未来へ
全てを思い出しつつある絵里奈。
何かに突き動かされるように向かった先は島にある写真館。そう、ここはまだ薫と呼ばれていた時、希和子と一緒に逃げる前に立ち寄って写真を撮った場所。
写真館の年老いた男は写真は5年前に希和子が取りに来たと告げる。そして絵里奈を現像室に連れて行く。浮かび上がる当時の写真。
写真を撮る時、希和子は薫(絵里奈)に言っていた。ママは薫と一緒で幸せだった。もう何もいらない。薫が全部持っていってね。
そう、フェリー乗り場で警察に囲まれる前に、既にこの時、もう一緒に居られないと覚悟してたんだ。
涙が止まらない希和子。写真を撮る時、写真館の男は言った。顔を上げて。絵里奈が見た写真の中の希和子は、きっと涙で顔をくちゃくちゃにしてたんだろう。
全てを思い出した絵里奈。
あふれる涙。封印していた感情が一気に噴き出す。憎みたくなんかなかったんだ。お母さんの事も、お父さんの事も。あなたの事も。この島に戻りたかった。本当は戻りたかった。でもそんなこと考えちゃいけないって思ってた。
私、働くよ。働いてお腹の子にいろいろなものを見せてあげるんだ。なんでだろう。もうこの子が好き。まだ顔も見てないのに。
絵里奈の中で8日目の蝉は未来輝く希望へと変わっていた。
- END -
ラストについて
原作、角田光代の小説「八日目の蝉」。NHKのドラマとしても放送され、そしてこの映画も作られました。
ラストのシーンについては、原作、ドラマ、映画、と各々異なるようです。
- 原作
希和子と絵里奈(薫)は、お互い気づかないままフェリー乗り場ですれ違う。
- ドラマ
希和子が成長した薫(絵里奈)に気が付き猛ダッシュで後を追う。
大きな声で呼びかける希和子。振り向く絵里奈。道を隔てて遠く離れた二人。
絵里奈から見た希和子は夕陽を背景にしていた。果たして確認ができたのか。
- 映画
出会わない。
絵里奈は封印していた昔の記憶を取り戻すと共に、それは忘れていた昔の自分を受け入れたことでもあり、お腹の子と一緒に生きて行く決心をした瞬間でもあった。
ドラマは視聴者にその判断をゆだねた形になってます。あなたはどのラストが良いでしょう?
私的にはどれでもなく少々具体的すぎる形ですが、誘拐犯、そして一時は母であった希和子と薫(絵里奈)の二人が、お互いをそれと認識せずに偶然どこかで再会してお互いの感じてることを会話する。そこで交わされるのは当人同士だからこそ分かり合える言葉たち。それによって二人とも新たな人生の一歩を踏み出す、みたいな形がいいな、と思います。
これでラストシーンで、え?もしかして、と去り際にお互い振り返る、なんて場面も付けば、結構いい感じなんじゃないかなー、と自画自賛。^◇^)ゞ
映画「八日目の蝉」 作品データ
- 監督 : 成島出
- 脚本 : 奥寺佐渡子
- 出演者:
永作博美(希和子)
井上真央(恵理菜)
渡邉このみ(薫)、
小池栄子(千草)
等々
音楽
映画で流れる音楽もとても良いです。
- 主題歌: 中島美嘉「Dear」
- 挿入歌:
ジョン・メイヤー「Daughters」
坂本九「見上げてごらん夜の星を」
ビーチ・ハウス「Zebra」
複雑な親子関係、複雑な逃避行ですが、良い映画だと思います。
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